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テロメアクライシス:テロメアクライシスの際のAPOBEC3依存性カタエギス(kataegis)とTREX1による染色体粉砕
Nature Genetics 52, 9 doi: 10.1038/s41588-020-0667-5
染色体粉砕とカタエギスはがんでよく観察され、テロメアクライシスから生じている可能性がある。テロメアクライシスとは、腫瘍形成過程においてゲノム不安定性を示す期間のことであり、この期間に、テロメア配列が減少し、不安定な二動原体染色体が生じる。本論文では、in vitroのテロメアクライシスモデルを用いて、染色体粉砕とカタエギスの原因となる機構を調べた。その結果、細胞質のエキソヌクレアーゼTREX1(二動原体染色体の解消を促進する酵素)が、染色体粉砕の断片化において顕著な役割を担っていることが分かった。TREX1が存在しないと、テロメアクライシスによって誘導されるゲノムの変化として、染色体粉砕ではなく、主に破壊–融合–架橋サイクルと単純なゲノム再編成が起こった。さらに、染色体粉砕の切断点で観察されるカタエギスが、APOBEC3Bによるシトシン脱アミノ化の結果であることが分かった。これらのデータは、染色体粉砕とカタエギスが、TREX1による核酸分解過程とAPOBEC3Bによるシトシン編集の組み合わせから生じることを明らかにしている。