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エピジェネティクス:独特な二成分ポリコームシグネチャーは発生中の刺激応答性転写を調節する
Nature Genetics 53, 3 doi: 10.1038/s41588-021-00789-z
環境刺激に対する速やかな細胞応答は、発生や成熟の基本である。極初期遺伝子の転写は、さまざまなシグナルに応答して数分以内に誘導され得る。しかし、発生段階においてこれらの誘導レベルがどのように調節されているかや、誤ったシグナルにより不適切な時期の活性化が起こるのがどのように防がれているかについては明らかになっていない。今回我々は、発生中の感覚ニューロンにおいて、極初期遺伝子には、独特な二成分ポリコームクロマチンシグネチャー(プロモーター上には活性化H3K27acがあるが、遺伝子本体には抑制的なEzh2依存的H3K27me3がある)が構築されており、その後に周産期の感覚活動依存的な誘導が起こることを見いだした。この二成分シグネチャーは、胚性幹細胞をはじめとする発生中の細胞タイプに広範囲に存在する。遺伝子本体のポリコーム標識は、mRNA伸長を阻害して生産的な転写を低下させるが、刺激依存的に起こる標識の速やかな除去や二成分遺伝子の速やかな誘導は可能なままにしている。今回の研究で、適切な刺激に対する転写応答の速度と大きさを調節すると同時に、刺激応答遺伝子の不適切な活性化を抑制するエピジェネティックな発生機構が明らかになった。