Perspective
単一細胞RNA塩基配列決定法:測定と発現のモデルを分離することにより単一細胞RNA塩基配列決定解析における混乱を正す
Nature Genetics 53, 6 doi: 10.1038/s41588-021-00873-4
典型的な単一細胞RNA塩基配列決定法のデータセットでは、値が0の割合が高く、ドロップアウト(dropout)あるいは欠損データ(missing data)といった用語の使用が広まってはいるが、その使い方は一貫性のないものとなっている。今回我々は、この用語のほとんどが役に立たたないばかりか、混乱を招くものであることを指摘し、混乱を減らすのに役立つ簡単な方法についてその概要を紹介する。本報告では、以下について述べている。(1)観察された単一細胞RNA塩基配列決定のデータの値は、真の遺伝子発現レベルと測定誤差の両方を反映しており、これらの寄与を注意深く区別することは、判断を明確にすることに役立つ。(2)モデルを作るときには、複雑なモデルからではなく、ポワソン測定モデルからスタートするのが良い。ポワソン測定モデルは単純であり、一般的には既存のデータとほぼ一致する結果が得られるからである。我々は、既存のいくつかの手法がこの方針の中でどのように捉えられるかについて概説するとともに、発現の変動についての各手法の仮定がどのように違うかについても概説する。また、我々の視点が、メッセンジャーRNAの発現レベルが細胞間で多様であるかどうかといった生物学的に興味深い疑問を解決するのにどう役立つかについても例示している。