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エピジェネティクス:DNAメチル化による遺伝子および反復配列の抑制は、転写因子の結合の直接的な阻害によるものが主流である
Nature Genetics 54, 12 doi: 10.1038/s41588-022-01241-6
哺乳類ゲノムのシトシンのメチル化は、遺伝子および反復配列のCpGに富んだ制御領域の転写を効率的に抑制する。その際、メチル化が転写因子の結合を直接阻害するのか、あるいはメチル化CpG結合ドメイン(MBD)タンパク質を介して間接的に阻害するのかは不明である。本研究では、マウス胚性幹細胞、マウス胚性幹細胞由来神経細胞、ヒト細胞株を使用して、機能的なMBDを持つ4種類のタンパク質全ての遺伝子を欠失させても、メチル化されたプロモーターは遺伝子や反復配列を再活性化しないことを明らかにした。一方、DNAのメチル化が解除されると、メチル化によって妨害されていた転写因子がこれらの再活性化を引き起こした。神経細胞において、メチル化による転写抑制を引き起こす転写因子を同定することができた。それには、変異型モチーフを持つ場合にのみメチル化感受性を示すONECUT1などがある。また、DNAメチル化を受けていない神経細胞で強く発現しているレトロトランスポゾンはCREモチーフを有し、メチル化感受性のCREB1との結合を介して、DNAがメチル化を受けていない状態で活性化されることが分かった。本研究は、in vivoでメチル化感受性を示す転写因子を明らかにするとともに、メチル化による制御領域や反復配列の抑制機構は、今回検討したMBDタンパク質を介する間接的な抑制ではなく、直接的な阻害が一般的であることを支持する結果となった。