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糖尿病:ゲノム規模のCRISPRスクリーニングにより、2型糖尿病リスクに影響する膵β細胞機能制御因子としてCALCOCO2を同定
Nature Genetics 55, 1 doi: 10.1038/s41588-022-01261-2
複雑な疾患を引き起こす遺伝的関連シグナルの伝達を担う遺伝子や伝達過程の同定は大きな課題である。2型糖尿病(T2D)の遺伝的シグナルの多くは膵島細胞の機能不全という形で影響を表すため、我々はヒト膵β細胞株に対してプール型ライブラリーを用いたゲノム規模のCRISPR機能喪失スクリーニングを実施した。疾患に関連する膵β細胞機能を示す指標として細胞内インスリン含有量を用い、この表現型に影響を与える580の遺伝子を検出した。さらに、既存の遺伝子およびゲノムのデータを統合して解析した結果、オートファジー受容体CALCOCO2を含む20の遺伝子の転写産物がT2Dエフェクター候補であることが支持された。CALCOCO2の喪失は、ミトコンドリアの形態異常、プロインスリンを含有する未成熟顆粒の減少、後期オートファジー阻害によるオートファゴソームの蓄積と関連していた。また、CALCOCO2遺伝子座にT2D関連バリアントを持つ人にはインスリン分泌に関する異常が認められた。本研究は、細胞を用いたスクリーニングを行うことにより既存のマルチオミクス解析の解析力が強化されることを示し、それにより疾患メカニズムの理解が促進され、またゲノムワイド関連解析により検出された座位の因果関係についてのエビデンスが得られることを示すものである。