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体細胞モザイク:948人のモザイク状染色体変化の組織横断的研究
Nature Genetics 55, 11 doi: 10.1038/s41588-023-01537-1
遺伝的変異は、生物個体の生涯を通じてその体に蓄積する。ヒトの体細胞の一塩基バリアントの特性はよく解析されているが、正常組織での大規模な染色体変化のパターンやその結果についてはほとんど分かっていない。本研究では、GTEx(Genotype-Tissue Expression)プロジェクトのデータを用いて、948人の健康な人に見られるモザイク状染色体変化(mCA)を組織横断的に調べ、RNAに基づく対立遺伝子不均衡の推定をハプロタイプフェージングによって補強した。約4分の1の人が、少なくとも1つの組織でクローン増殖したmCAを有しており、その発生率は年齢と強い相関が見られることが分かった。mCAの保有率とゲノムワイドのパターンは、組織タイプによって大きく違いが見られることから、組織特異的な変異原曝露や選択圧があることが示唆される。正常な副腎や脳下垂体のmCAの状況は、これらの組織から生じる腫瘍のそれと類似していたが、食道や皮膚の場合は類似していなかった。まとめると、我々の知見は、mCAはヒトの正常組織全体で広範に年齢依存的に出現し、腫瘍発生と複雑に関係することを示している。