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老化:ヒトおよびマウスの脳における老化とアルツハイマー病の病因に関連する細胞集団の動態と分子シグネチャーの全体像
Nature Genetics 55, 12 doi: 10.1038/s41588-023-01572-y
老化や疾患に関連するまれなタイプの細胞の動態を明らかにするには、従来の方法では不十分である。本論文では、哺乳類の脳における月齢や年齢に依存的な細胞動態を探索するための、一細胞レベルでのコンビナトリアル索引付け法であるEasySciを紹介する。さまざまなマウスの脳において約150万の一細胞トランスクリプトームと約40万のクロマチン接近可能性プロファイルを作成することで、300を超える細胞サブタイプを特定し、それらの分子特性と空間的位置を明らかにした。この包括的な解析の結果から、老化に伴って拡大あるいは激減するまれなタイプの細胞が明確になった。また、アルツハイマー病に関係する遺伝的変化に対する細胞タイプ特異的な応答を調べることで、関連するまれなタイプの細胞を特定した。さらに、ヒト脳の11万8240の一細胞トランスクリプトームのプロファイリングを行うことで、アルツハイマー病の病因に関係する細胞特異的および脳領域特異的なトランスクリプトームの変化を見いだした。結論として、この研究は、正常な老化と病的な老化の両方における細胞タイプ特異的な動態を調べるための貴重な情報資源となる。