Technical Report

クロマチン解析:一細胞sortChICにより明らかになった造血中の階層的なクロマチン動態

Nature Genetics 55, 2 doi: 10.1038/s41588-022-01260-3

ヒストンの翻訳後修飾は、クロマチン活性を調節して遺伝子発現に影響を及ぼす。しかし、クロマチン状態が一細胞レベルでの細胞系譜選択にどのように関わっているのかは、あまり調べられていない。今回我々は、sortChIC(sort-assisted single-cell chromatin immunocleavage)法を開発し、マウスの骨髄における活性型(H3K4me1およびH3K4me3)と抑制型(H3K27me3およびH3K9me3)のヒストン修飾をマッピングした。造血幹・前駆細胞(HSPC)は分化の間に、細胞タイプを指定する転写因子の仲介によって活性型クロマチン状態を獲得し、これらの状態はそれぞれの細胞系譜に固有である。対照的に、分化の間に起こる抑制型の標識の変化は、最終的な細胞タイプと無関係に生じたものがほとんどだった。クロマチンの軌跡を解析したところ、クロマチンレベルでの細胞系譜選択は、前駆細胞の段階で起こることが分かった。H3K4me1とH3K9me3の統合したプロファイリングからは、骨髄細胞系譜内の細胞タイプは、系譜によって異なる活性型クロマチンを有するが、ヘテロクロマチン状態については、骨髄特異的な類似した状態を共通に持つことが明らかになった。この結果は、造血中のクロマチンには階層的な調節があることを意味しており、すなわち、ヘテロクロマチンの動態は分化軌跡と細胞系譜で異なるのに対して、ユークロマチンの動態は細胞タイプを反映しているということである。

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