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喫煙:複数祖先系のトランスクリプトームワイド関連研究から喫煙の生物学的性質や薬剤リパーパシングについての知見が得られる

Nature Genetics 55, 2 doi: 10.1038/s41588-022-01282-x

これまでの大部分のトランスクリプトームワイド関連解析(TWAS)はヨーロッパ系の人を中心としており、多様性を欠いている。本論文では、このような問題を克服するために、さまざまな祖先系の人からゲノムワイド関連解析(GWAS)の要約統計量、全ゲノム塩基配列、発現量的形質座位(eQTL)のデータを集めた。また、TESLA(multi-ancestry integrative study using an optimal linear combination of association statistics、関連統計量の最適な線形結合を用いた複数祖先系の統合解析)という新しい手法を開発し、eQTLデータセットと複数祖先系GWASを統合した。TESLAは、祖先間で共有される表現型効果を利用し、効果に不均一性がある可能性を調整することによって、他のTWAS法よりも検出力を向上させている。TESLAを喫煙表現型に適用すると、273の新しい遺伝子が明らかになり、これはほかのTWAS法よりも最大55%多い。こうして見つかった遺伝子とその後に行ったTESLAの結果を用いたファインマッピングから、生物学的に合理性の高い標的遺伝子が明らかになった。in silicoでの薬剤リパーパシング解析から、デキストロメトルファンやガランタミンなどの有効性が既知のいくつかの薬剤や、ニコチン嗜癖の治療に新たに転用できる可能性として筋弛緩剤などが明らかになった。

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