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雑種強勢:近交系創始者系統のトウモロコシ12系統の新規ゲノムアセンブリと解析により雑種強勢の理解が深まる
Nature Genetics 55, 2 doi: 10.1038/s41588-022-01283-w
雑種トウモロコシは優れた雑種強勢を示し、世界の穀物生産量の30%以上を占めている。しかし、雑種強勢の分子機構はよく分かっていない。本論文で我々は、親系統間の構造変異(SV)がトウモロコシの雑種強勢に主要な役割を果たしていることを示す。近交系創始者系統(FIL)のトウモロコシ12系統について新規ゲノムアセンブリと解析を行った結果、これらFIL間に数多くの遺伝的変異が存在することが判明し、また発現量的形質座位解析および関連解析により、さまざまな雑種強勢群におけるゲノムの差や表現型の差に寄与する複数のSVを検出した。ダイアレル交配により得られた91組のF1雑種を用いた解析からは、F1雑種が優良親を上回る雑種強勢を示す現象と親系統間のSV数との間に強い正の相関を見出し、雑種強勢には広く遺伝的補完が関与していることをゲノムデータから裏付けることができた。さらに、ZAR1とZmACO2の両遺伝子に見られるSVが収量における雑種強勢に超優性的に寄与することを示す証拠を提示する。本研究はゲノムデータにもとづく雑種トウモロコシの育種を促進するものである。