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心房細動:心房細動の祖先系集団横断的ゲノムワイド関連解析による疾患生物学の解明と心原性脳塞栓症のリスク予測
Nature Genetics 55, 2 doi: 10.1038/s41588-022-01284-9
心房細動(AF)はよく見られる不整脈であり、脳卒中の発症リスクを上昇させる。その遺伝率の高さにもかかわらず、AFの遺伝学的基盤に関する理解はいまだ完全とは言えない。本研究では9826人の症例を含む15万272人の日本人集団を対象にゲノムワイド関連解析を実施し、AFとの関連を有する東アジア人に特有のレアバリアントを同定した。また、7万7690人の症例を含む100万人以上の集団を対象とした祖先系集団横断的メタ解析により、35の新規疾患感受性座位が同定された。トランスクリプトームワイド関連解析ではIL6Rが原因遺伝子候補として見つかり、免疫応答の関与が示唆された。ChIP-seqデータとの統合解析およびヒト人工多能性幹細胞由来の心筋細胞を用いた機能評価により、ERRgがAF関連遺伝子の転写制御に重要な役割を担っていることが明らかとなった。祖先系集団横断的メタ解析の結果から導出した多遺伝子リスクスコアにより、心血管疾患および脳卒中による死亡リスクの上昇を予測し、まだ診断されていないAF患者の中から心原性脳塞栓症の発症リスクが高い人を分離することができた。本研究の結果は、AFの遺伝学に新たな生物学的・臨床的な知見をもたらし、その臨床応用の可能性を示唆するものである。