Article
がん免疫:原発がんと転移がんにおける遺伝的免疫回避の全体像
Nature Genetics 55, 5 doi: 10.1038/s41588-023-01367-1
原発腫瘍における免疫回避の状況が研究により明らかになってきた。しかし、後期ステージの転移腫瘍では、遺伝的免疫回避(GIE)が生じている割合(GIE保有率)や動態に違いがあるかどうかは明らかになっていない。本論文では、データ統合処理を行った6319の腫瘍試料において、6つの免疫回避経路でのGIE保有率の特徴を、がん横断的に調べた。我々は、生殖細胞系列や腫瘍に見られるHLA-I座位の複雑さに対処するために、オープンソースの統合フレームワークであるLILACを開発した。腫瘍4つのうち1つはGIEが変化しており、がんのタイプによってGIEの機構と頻度に大きなばらつきがあった。GIE保有率は、一般的に原発腫瘍と転移腫瘍の間で一致していた。腫瘍の進化の際にGIEの変化が選択されること、そしてHLA-Iの局所的なヘテロ接合性の消失によって、最大のネオエピトープレパートリーを提示するHLA対立遺伝子の除去が起こる傾向があることが明らかになった。また、腫瘍変異量が多い腫瘍では、HLA-Iの局所的なヘテロ接合性の消失に向かう傾向が免疫回避機構であること、しかし、その中でも特に高頻度に変異が発生している腫瘍では、この傾向とは異なり他の免疫回避戦略が優勢であることが分かった。