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系統解析:バイオバンク規模で祖先系ゲノムの組換えグラフを推定することにより複雑形質の系統解析が可能になる
Nature Genetics 55, 5 doi: 10.1038/s41588-023-01379-x
ゲノム全域の系統樹は、一連のゲノムの進化の歴史をコンパクトに表すものであり、それらを遺伝学的データから推定することによって幅広い解析が容易になる可能性がある。本論文では、塩基配列決定データあるいは遺伝子型判定アレイのデータからバイオバンク規模で系統関係を正確に推定する方法であるARG-Needleと、こうした系統樹を利用して関連解析をはじめとする複雑形質の解析を行う戦略について紹介する。ARG-Needleを用いて、英国バイオバンクに登録された33万7464人の遺伝子型判定データからゲノム全域の系統樹を構築し、7つの複雑形質について関連を調べた。希少および超希少な関連シグナルの検出については、系統樹に基づく方法(N = 134、頻度の範囲0.0007〜0.1%)が、約6万5000のハプロタイプの塩基配列決定データを用いた遺伝子型インピュテーション(N = 64)よりも、関連シグナルをより多く検出した。13万8039のエキソーム塩基配列決定試料で検証すると、これらの関連は、機能喪失変異を豊富(4.8×)に含む配列バリアントを示す標識に強く関連した(平均r = 0.72)。これらの結果は、ゲノム全域の系統樹の推定を複雑形質の解析に利用できる可能性を示しており、大規模で集団特異的なシークエンシングパネルの利用を必要とする手法を補完するものである。