Technical Report

染色体外DNA:がん細胞の染色体外環状DNAとトランスクリプトームを一細胞レベルで並行塩基配列決定する

Nature Genetics 55, 5 doi: 10.1038/s41588-023-01386-y

染色体外DNA(ecDNA)はがんではよく見られるが、その起源、構造動態、腫瘍内不均一性に及ぼす影響について、多くの疑問はいまだ解明されていない。本論文では、一細胞レベルで行う染色体外環状DNAと完全長mRNAの並行塩基配列決定法であるscEC&T-seq(single-cell extrachromosomal circular DNA and transcriptome sequencing)について報告する。scEC&T-seqをがん細胞に適用することで、細胞間のecDNA含有量の差異について詳細を明らかにするとともに、それらの構造不均一性と転写への影響を調べた。がん細胞には、がん遺伝子を含むecDNAがクローンとして存在していて、細胞間のがん遺伝子発現の差異を引き起こしていた。対照的に、他の小さな環状DNAは個々の細胞に限定的であるので、両者の選択と増幅には違いがあることが分かった。ecDNAの構造に細胞間の差異があることは、環状組換えがecDNAの進化機構であることを示している。これらの結果は、scEC&T-seqが、がん細胞に含まれる大小両方の環状DNAの特徴を体系的に明らかにする手法であることを実証しており、この方法によって、がん以外でのDNA因子の解析も促進されると考えられる。

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