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塩基編集:塩基編集による強力かつ均一な胎児ヘモグロビンの誘導
Nature Genetics 55, 7 doi: 10.1038/s41588-023-01434-7
赤血球で胎児ヘモグロビン(HbF)を誘導すると、βサラセミアや鎌状赤血球症を軽減することができる。本研究では、CD34+造血幹・前駆細胞において、Cas9ヌクレアーゼまたはアデニン塩基エディターを用いる5つの戦略を比較した。最も強力な修飾は、アデニン塩基エディターによるγグロビン–175A>Gの生成だった。–175A>Gをホモ接合で持つように編集された赤血球コロニーは、81 ± 7%でHbFを発現したのに対して、編集していない対照群での発現は17 ± 11%だった。一方、γグロビンプロモーターやBCL11A赤血球エンハンサー内のBCL11A結合モチーフを標的とする2つのCas9法では、HbFレベルは低く、ばらつきも大きかった。また、マウスにCD34+造血幹・前駆細胞を移植した後に作られた赤血球での–175A>G塩基編集は、Cas9法よりも強力にHbFを誘導した。我々のデータは、HbFを強力かつ均一に誘導する戦略を示唆し、γグロビンの遺伝子調節についての洞察をもたらすものである。より一般化すると、Cas9による多様な挿入欠失(インデル)によりもたらされ得る予期せぬ表現型のばらつきを、塩基編集によって回避できることが今回の研究で実証された。