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発生:器官形成開始時のマウス胚全体の時空間的トランスクリプトームマップ
Nature Genetics 55, 7 doi: 10.1038/s41588-023-01435-6
遺伝子発現が時空間的に調整されていることは、適切な胚発生が起こる上で必須である。一細胞技術を用いることで、マウス胚発生初期のほとんどの細胞状態に対して分子の定義といった詳細な理解が進み、動的な発生調節の解像度が向上し始めている。本研究では、Slide-seq技術を用いて、胎生(E)8.5日胚およびE9.0日胚の完全な空間トランスクリプトームマップと、E9.5日胚の部分的な空間トランスクリプトームマップを構築した。これらのマップの有用性を裏付けるために、我々は三次元の「仮想胚」を構築し探索するためのツールであるsc3Dを開発した。sc3Dによって、領域ごとの遺伝子発現パターンを定量的に研究することが可能になった。神経管発生中の胚の主軸に沿った測定により、これまでに示されていなかった明確な空間パターンを持つ複数の遺伝子が明らかになった。我々はまた、Tbx6変異胚で見られる「異所的」神経管の相反する転写アイデンティティーを特徴付けした。まとめると、本研究は、胚全体の構造と変異体表現型について時空間的研究を行うための実験的および計算機的枠組みを提示するものである。