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造血:in vivoスクリーニングによって正常および悪性の造血に果たすクロマチン因子の機能の特徴が明らかになる
Nature Genetics 55, 9 doi: 10.1038/s41588-023-01471-2
細胞の分化にはクロマチンの構造や機能の広範な変化が必要であり、これはクロマチンと転写因子の協調作用によって引き起こされる。分化におけるクロマチン因子の役割は、転写因子とは対照的に、体系的に特徴付けられていない。本論文では、ex vivoのバルクでのCRISPRスクリーニングと、in vivoの一細胞でのCRISPRスクリーニングを組み合わせて、造血におけるクロマチン因子ファミリーの役割の特徴付けを行った。その結果、142のクロマチン因子について、顕著な細胞系譜特異性が明らかになり、よく似たクロマチン因子(つまり、BAF〔barrier-to-autointegration factor〕サブ複合体)間に機能的多様性が見られた一方で、関連性のない複数の抑制複合体に過剰な骨髄系分化を抑制するという共通の役割があることが明らかになった。エピジェネティックなプロファイリングを用いて、細胞系譜を決定する転写因子といくつかのクロマチン因子の間に機能的相互作用があることが明らかになったことで、クロマチン因子の細胞系譜依存性が説明された。白血病におけるクロマチン因子の機能の解析から、白血病細胞によってクロマチン因子の恒常的に働く機能が分化の阻害に働くことで、特定のクロマチン因子–転写因子の相互作用が生じ、これが治療標的になる可能性があることが分かった。まとめると我々の研究から、正常および悪性の造血においてクロマチン因子の細胞系譜を決定する特性が解明された。