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組織特異的遺伝子発現:組織共調節のモデル化により、疾患に対する組織特異的な関与を推定する

Nature Genetics 55, 9 doi: 10.1038/s41588-023-01474-z

ゲノムワイド関連解析と遺伝子発現データを統合した解析によって、疾患に重要な組織の関与が数多く明らかにされている。しかし、遺伝子発現への遺伝的影響がいろいろな組織で共調節されている現象は、タグ付けされた組織から生物学的に原因となる組織を見分ける上で妨げとなる。本研究では、タグ付け組織から原因組織を識別するための組織共調節スコア回帰(tissue co-regulation score regression:TCSC)という方法を紹介する。この方法は、組織共調節スコアを用いて遺伝子–疾患関連の統計量(トランスクリプトームワイドの関連解析に由来する)を求める手法であり、組織共調節スコアは、さまざまな遺伝子と組織に関して予測遺伝子発現の相関を表している。我々はTCSCを、78の疾患や形質(平均n = 30万2000)と、GTExの48組織に対する遺伝子発現予測モデルに適用した。TCSCにより、5%の偽発見率(FDR)で21の原因組織–形質ペアが見つかり、これらにはよく知られている知見、生物学的にもっともらしい新たな知見(例えば、大動脈と緑内障)や、既知の組織–形質の関連の特異性を高める知見(例えば、皮下脂肪〔内臓脂肪ではなく〕と高密度リポタンパク質)が含まれていた。TCSCはまた、5%のFDRで、17の原因組織–形質の共分散ペアを特定した。結論として、TCSCはタグ付け組織から原因組織を区別するための正確な手法である。

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