空間生物学：CellCharterは組織リモデリングと細胞可塑性に関連する空間的細胞ニッチを明らかにする

組織を構成する細胞ニッチの組成やそれらの相互作用は、空間オミクス技術を用いて調べることができる。しかし、データの規模や多様性の大きさから、組織の組成を総合的に解析することは簡単ではない。本論文では、空間的に分解されたデータセットから細胞ニッチの同定、特徴付け、比較を行うためのアルゴリズム的手法であるCellCharterを紹介する。異なる技術で生成された何百もの試料や何百万もの細胞からなるデータセットにCellCharterを適用すると、既存の手法を凌駕する性能を示し、細胞ニッチを効果的に同定することができた。CellCharterを複数のヒト肺がんコホートの解析に適用すると、腫瘍関連好中球と低酸素症および細胞遊走のマーカーを発現するがん細胞からなる細胞ニッチが見つかった。このがん細胞の状態はより高い増殖性の腫瘍細胞群から空間的に分離していて、独立した患者コホートにおいて腫瘍関連好中球浸潤および予後不良と関連していた。全体としてCellCharterは、異なるデータタイプや技術を超えて、組織の空間的構造と細胞可塑性の間の関係を系統的に解き明かすことを可能にする。