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末梢血の機能ゲノミクス:ヒト血液細胞の物理的・化学的・薬理学的刺激後の表現型解析から、遺伝的に決定される潜在的形質と、これらの形質と一般的疾患のサブセットとの関連が明らかになる
Nature Genetics 56, 1 doi: 10.1038/s41588-023-01600-x
ゲノムワイド関連解析(GWAS)は、さまざまな疾患と遺伝的リスク座位を結び付けることには成功しているが、根底にある細胞生物学的機構を突き止めるのは、一般的疾患の複雑さから非常に難しい。本論文では、潜在的な細胞過程を明らかにするために、ヒト末梢血細胞に物理的・化学的・薬理学的な刺激を与え、フローサイトメトリーによる解析を行う枠組みを確立し、誘導された形質に関するGWASを最大2600人において行った。その結果、これらの細胞応答と119のゲノム座位との関連が明らかになり、96遺伝子の関与が示唆された。また、誘導された血液表現型と一般的疾患のサブセットとの間に関連が見いだされた。心代謝性疾患の特定のサブセットの患者には、炎症性で抗アポトーシス性の好中球の集団がよく見られることが分かった。この形質に基づく多遺伝子モデルから、2型糖尿病患者における慢性腎疾患の発症リスクが予測された。ヒトの遺伝学的研究のための表現型空間を拡大することで、細胞応答の差異に関連する大きな効果を持つバリアントが特定され、患者が層別化され、根底にある生物学的性質を効率的に特徴付けることができた。