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皮膚色:統合的機能ゲノム解析からアフリカ人の皮膚の色素形成に影響を及ぼす遺伝的バリアントを発見
Nature Genetics 56, 2 doi: 10.1038/s41588-023-01626-1
アフリカ人の皮膚の色はさまざまであるが、この根底にある分子機構についてはほとんど分かっていない。本論文では、アフリカ人の皮膚の色素形成に影響を及ぼす1157の候補バリアントを大規模並列レポーターアッセイによってスクリーニングし、アレル間で異なる転写調節活性を示す165の一塩基多型を見いだした。Hi-C、ゲノム編集、メラニンアッセイを組み合わせることで、MFSD12、HMG20B、OCA2、MITF、LEF1、TRPS1、BLOC1S6、CYB561A3の調節配列は、in vitroにおいてメラニン量に影響を及ぼし、ヒトの皮膚色を調節することが明らかになった。また、OCA2エンハンサーに生じた独立した変異がヒトの皮膚色の多様性の進化に関与することと、MITF、LEF1、TRPS1のエンハンサーに局所適応のシグナルが検出されることが分かった。この局所適応シグナルが、アフリカ南部のコエサン語を話す集団の明るい皮膚色に関与している可能性がある。さらに、CYB561A3を色素形成制御因子として新たに同定し、これは酸化的リン酸化やメラニン形成に関与する遺伝子に影響を及ぼすことが明らかになった。これらの知見は、ヒトの皮膚色の多様性と適応進化の基礎となる機構の手掛かりとなる。