Review Article
老化:老化の原因メカニズムと付随するメカニズムを区別する
Nature Genetics 56, 2 doi: 10.1038/s41588-023-01627-0
我々はなぜ老いるのかを理解することは長年の課題であり、これまでに老化のメカニズムについての理論が数多く提唱されている。しかし、定量的に測定する適切な手法がないなど、老化過程の研究には限界があるため、その根底にあるメカニズムはいまだ議論の対象である。ここでは、因果関係の観点から老化理論を探る。これまでにゲノム、テロメア、ミトコンドリア、エピゲノム、タンパク質の分子的な変化や、幹細胞、免疫系、老化細胞の蓄積に影響を及ぼす細胞変化など、老化に関連する多くの変化が観察されており、それらは老化を引き起こす因子であるとうたわれている。だが、どの変化が老化を引き起こす因子(ドライバー)であり、付随する因子(パッセンジャー)ではないのかを見極めることは、依然として困難である。本稿では、動物モデルやヒトの遺伝学研究が、因果関係を推測するために経験的にどのように用いられてきたかについて述べる。まとめると、ヒトの老化を引き起こす要因についての理解は不十分なままであるが、世界中で高齢化が進む中、やがては老化の原因究明によって生物医学研究に革命が起こる可能性がある。