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肢発生:肢の発生過程ではTAD境界が積み重なって相互作用することによりTAD間でのエンハンサー–プロモーターコミュニケーションが可能になる

Nature Genetics 56, 2 doi: 10.1038/s41588-023-01641-2

プロモーターとそのエンハンサーは、同一のトポロジカルドメイン(TAD)内部に含まれることが多いが、発生に重要な遺伝子の中には、プロモーターとエンハンサーが異なるTADに存在するものもある。TAD間での相互作用が可能になる分子機構についての仮説は検証されていない。本論文では、これらの仮説を検討するために、クロマチン構造の光学的再構築を用いて、マウスの発生中の肢における単一染色体上のPitx1座位のコンホメーションの特徴を調べた。我々のデータから、ループ突出の結果として隣接するTAD境界が積み重なり、境界の近位にあるシス配列が接触するようになるモデルが裏付けられた。この境界の積み重なりによる相互作用は、クロマチン集団平均としてのマップにおける構造的なストライプパターン(しま模様)の出現にも関与する。分子動力学シミュレーションにより、境界の強度が増すと、境界が積み重なったコンホメーションの形成が促進され、直感とは逆に、境界の効果が発揮されにくくなることが分かった。この研究は、TAD境界はシス調節配列の相互作用の促進にも阻止にも機能するという新たな考え方を提供し、境界を超えて相互作用するエンハンサー–プロモーター対と、境界内で相互作用するエンハンサー–プロモーター対とを識別する枠組みを紹介している。

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