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リンゴ:ハプロタイプを区別したギャップのほぼ存在しないリンゴゲノムにより、台木による果樹の矮化の遺伝的基盤が明らかになる
Nature Genetics 56, 3 doi: 10.1038/s41588-024-01657-2
矮性台木は、栽培リンゴの収量を大きく変化させた。しかし、台木により誘導される果樹の矮化の遺伝的基盤はほとんど明らかにされていない。我々は使用頻度の高い矮性台木「M9」、半矮性台木「MM106」、および最も栽培頻度の高いリンゴ品種の1つである「ふじ」について、ハプロタイプおよび染色体を区別した、ギャップのほぼないゲノムをアセンブリした。オーキシン応答因子3(ARF3)のリンゴにおけるオルソログ遺伝子(MdARF3)は、台木による矮化を担う主要遺伝子座位であるDw1領域に存在している。M9とMM106のゲノムを比較したところ、M9のMdARF3の上流に、対立遺伝子特異的に9723塩基対のgypsy型のLTR(long terminal repeat)型レトロトランスポゾンDwTEが挿入されていることが明らかとなった。DwTEは2つの分離集団において矮化形質と共に共分離しており、将来の矮性台木の育種に利用できる可能性がある。加えて、我々が開発した移行性mRNA検出パイプラインによって、矮性穂木の構造形成に寄与している可能性のある移行性mRNAを発見した。本研究は有用なゲノム情報資源と応用可能な方法論を提供するもので、これによりリンゴを含む多年生果樹の矮性台木の育種が加速する可能性が示された。