Technical Report
変異シグネチャー:MuSiCalを用いた正確かつ高感度の変異シグネチャー解析
Nature Genetics 56, 3 doi: 10.1038/s41588-024-01659-0
変異シグネチャー解析は、ゲノムの体細胞変異を解釈するための計算手法として最近用いられている。この手法をがんデータへ適用すると、腫瘍形成を推進する変異の影響力についての理解が深まり、また、予後や治療の決定に役立つ情報が得られる可能性が実証されている。しかし、新しいシグネチャーを見いだし、既存のシグネチャーに適切な重みを割り当てるには方法論的な課題が残っているため、臨床への広範な適用の障害となっている。本論文では、標準ワークフローの主な問題を解決するアルゴリズムを備えた厳密な解析の枠組みであるMuSiCal(Mutational Signature Calculator)を示す。我々のシミュレーション研究から、MuSiCalは、シグネチャーの発見と割り当ての両方について、最先端のアルゴリズムより優れた性能であることが実証された。2700を超えるがんゲノムを再解析することで、シグネチャーとその割り当ての改善されたカタログが得られ、現在のカタログには含まれていない9つのインデルシグネチャーが見いだされ、よく分かっていなかった「単調な」シグネチャーについての長年の問題が解決され、未知の病因を持つシグネチャーについての手掛かりが得られた。我々は、MuSiCalとこの改良カタログが、変異シグネチャー解析のベストプラクティスの確立に向けた一歩となることを期待している。