【惑星科学】地球上の海水が宇宙に流出する恐れ
Nature Communications
2016年2月10日
Planetary science: Earth's oceans lost in space
二酸化炭素(CO2)の濃度が上昇することによって地球型惑星の居住可能性が失われる可能性を示した研究論文が、今週掲載される。この新知見は、温室効果ガスが太陽光度と同じくらい強力に地球の極めて重要な水資源を消尽することを示している。
今後数百万年の間、太陽光度が上昇し続けて、地球への太陽放射量が増加していくと考えられている。その結果、地表の温度は上昇を続け、液体の水が不安定になるレベルに達し、海洋、河川、湖沼の水分は蒸発して、大気中に放出され、最終的には宇宙に流出して、地球は居住不能になる。これに対して、二酸化炭素などの温室効果ガスの大気中濃度が大きく上昇することによっても、水の豊かな惑星の居住可能性が損なわれる可能性があるのか、という点はこれまで解明されていなかった。
今回、Max Poppたちは、全体を水に覆われた理想化された惑星上で大気中の二酸化炭素濃度が変化した場合の影響をモデル化して、この変化が地球の気候システムに及ぼす影響可能性を調べた。Poppたちは、一連の数値シミュレーションが用いることで、二酸化炭素濃度が1,520 ppmに達すると、平均地表面温度が330 K(摂氏約57度)を超えることを明らかにした。そして雲のフィードバック効果によって地球の気候が不安定化して、上層大気の水蒸気量が増え、水蒸気量の少ない現在の地球の上層大気の場合よりも急速に大気中の水分が宇宙に流出すると考えられることが分かった。
今回の研究で得られた知見からは、惑星の居住可能性に対する脅威の点で、温室効果ガスと太陽光度が同等であることが示唆されているが、この温室効果ガスによる一連のプロセスは、大気中二酸化炭素濃度が現在よりかなり高いレベルに達した時に生じ、人間の時間スケールではなく、地質学的時間スケール(数百万年単位)で進行する。
doi: 10.1038/ncomms10627
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