注目の論文
素粒子物理学:反物質の性質解明に近づく
Nature
2020年2月20日
Particle physics: Homing in on the properties of antimatter
これまで理論的に予測することしかできなかった反水素の物理的性質を高精度で測定したことを報告する論文が、今週Nature に掲載される。CERNのALPHA共同研究による今回の観測結果は、理論と合致し、水素の性質にも対応している。この新知見で、物質と反物質の対称性が浮き彫りになっている。
宇宙には物質が反物質よりも多く存在するため、物質と反物質の性質を調べて比較することが、宇宙の形成を解明する上で役立つ可能性がある。最も単純な原子である水素の微細構造については、十分に研究されているが、水素に対応する反水素についての研究は、あまり進んでいない。
今回、Jeffrey Hangstたちの共同研究グループは、反水素におけるラムシフトが観測されたことを報告している。ラムシフトは、当初、水素において観測された量子電磁力学効果で、水素スペクトルの微細構造のエネルギー準位に差が生じる現象である。今回の観測結果は、水素における観測結果とも反水素についての予測とも合致しており、自然界の基本的な対称性の検証を可能にする。同時掲載のRandolf PohlのNews & Viewsでは、今回の観測結果が、反水素のさらなる研究の扉を開くと指摘されている。例えば、反水素の量子電磁力学的特性を調べたり、素粒子物理学の標準模型に関して、対象を絞った検証を行ったりできるかもしれない。
doi: 10.1038/s41586-020-2006-5
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