生物物理学:渡りをする鳴禽類の磁気コンパスに注目
Nature
2021年6月24日
Biophysics: Homing in on the magnetic compass of migratory songbirds
ヨーロッパコマドリの目に発現するタンパク質の磁気感受性の観察結果から、このタンパク質が「生体コンパス」の一部として機能し、渡りをする鳴禽類が地球の磁場を使ったナビゲーションを可能にしていることが示された。この知見の詳細を報告する論文が、今週、Nature に掲載される。今回の知見は、渡りをする動物に由来する磁気感受性分子の存在を示している。
渡りをする多くの動物は、地球の磁場を空間定位のためのコンパスとして用いて、渡りの経路を決定している。光感受性タンパク質であるクリプトクロム類をナビゲーション機構の要素とする仮説が提起されているが、ナビゲーション能力を支える特有のタンパク質と物理的性質の解明は進んでいない。今回、Peter Horeたちの研究チームは、渡りをする夜行性鳴禽類であるヨーロッパコマドリ(Erithacus rubecula)の目の光検出細胞に発現するクリプトクロム4(CRY4)を単離し、その特性を解析した。その結果、CRY4は、光に依存する磁気コンパスとして機能するために必要な磁気特性を有している可能性のあることが判明した。CRY4は、磁気シグナルを増幅すると考えられている量子効果を引き起こす光駆動性化学反応を示す。また、ヨーロッパコマドリ由来のCRY4は、渡りをしないニワトリ(Gallus gallus)やハト(Columba livia)に由来するCRY4よりも磁気感受性が高く、磁気センサーとしての役割を果たしていることがより強く示唆された。
以上の知見は、CRY4が、渡りをする鳴禽類において地球強度磁場を検出できるセンサーとして機能している可能性を示唆している。しかし、CRY4タンパク質がこれらの鳥類において本当に磁気センサーとして機能しているのかを明らかにするためには、目に発現しているCRY4を直接検査する必要がある。
doi: 10.1038/s41586-021-03618-9
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