物理学:核融合炉にとって火急の問題
Nature
2022年1月27日
Physics: Burning issues in nuclear fusion
プラズマ状態の物質の自己加熱が核融合によって実現したことを報告する論文が、今週、Nature に掲載される。今回の知見は、核融合エネルギーが実現可能なエネルギー源となる可能性に向けた画期的成果だ。同時にNature Physics に掲載される論文には、この成果を可能にした実験計画の最適化が記述されている。
原子核を融合させて、エネルギーを放出させる核融合は、持続可能なエネルギー源となる可能性を秘めている。核融合は、宇宙の星にエネルギーを供給する物理的過程だが、実験室での再現は困難で、放出されるエネルギーよりもはるかに多くのエネルギーが消費される。余剰エネルギーを生み出すと考えられている核融合の実現に向けた重要な一歩が、燃焼プラズマだ。燃焼プラズマでは、核融合が主要な熱源となり、プラズマ状態の燃料の温度が核融合反応の連続的発生を引き起こすのに十分な高さに維持されている。今回のAlex Zylstraたちの論文では、慣性閉じ込め核融合実験で燃焼プラズマが実現されたことが報告されている。この実験では、熱核燃料が充填されたカプセルを圧縮し、加熱することによって核融合反応が開始される。
米国立点火施設で行われた実験では、192本のレーザービームを用いて200マイクログラムの重水素–トリチウム燃料が充填されたカプセルを急速に加熱して爆縮させてプラズマ燃焼を実現し、自己加熱核融合反応を引き起こすために十分な温度と圧力に達した。プラズマ燃焼の実現を試みる研究は、これまでも行われてきたが、レーザービームによってプラズマにエネルギーが蓄積される過程が乱さないようにプラズマの形状を制御するという課題のために、思うような成果が上がらなかった。今回、Zylstraたちは、実験の設計を改良して、プラズマ状態の燃料をこれまでより大量に保持しつつ、これまでより多くのエネルギーを吸収できるカプセルを使用できるようにした。これらの実験によって達成された性能(最大170キロジュールのエネルギー収量)は、以前の実験で得られたエネルギー収量の3倍であった。
doi: 10.1038/s41586-021-04281-w
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