注目の論文

物理学:女性の論文の引用数は男性の論文より少ない

Nature Physics

2022年10月6日

Physics: Women are cited less than men

物理学の35の学術誌に掲載された100万報を超える論文の分析によると、女性が著者の物理学の論文は、男性が著者の論文と比べて著しく引用数が少ないことを報告した論文がNature Physics に掲載される。この知見から、引用傾向におけるジェンダー格差に取り組むための有効な戦略に関する情報が得られるかもしれない。

引用数は、特定の物理学者の研究業績や影響力を、大学の雇用委員会や資金提供団体が評価するのに日常的に使われている。女性は、物理学の分野では過小評価されており、偏見や差別に直面することがあるため、この偏見が引用傾向に反映され、女性の研究の認知に悪影響を及ぼしている可能性がある。

今回D Bassettたちは、1995年から2020年にかけて物理学の35の学術誌に掲載された約107万報の論文に載った筆頭著者と最終著者のジェンダーを分析した。著者のジェンダーは、名から推測された。著者たちは、このジェンダー選択法は必ずしも正確とは限らず、トランスジェンダーやノンバイナリージェンダーを考慮していないが、特定の研究を引用する人々も名からジェンダーを推測しており、認識した著者のジェンダーの影響を受けると主張できると力説している。筆頭著者と最終著者が男性の論文は、引用されることが予想より多いのに対して、筆頭著者や最終著者が女性の論文の引用は予想より少なく、総合的な引用のジェンダー格差が約4.23%であることが見いだされた。男性著者の論文に有利な引用の不均衡は、男性が執筆した論文や一般物理学の論文において、また、引用する著者が引用文献の内容や著者をあまりよく知らない場合に最も大きかった。

著者たちは、今回の知見が、女性よりも男性の物理学者の論文が引用に有利になる偏りが存在することを示唆していると結論付けている。そして著者たちは、この引用の格差に取り組むのに役立つ可能性がある具体的な活動を提案している。個々人のレベルでは、著者たちは、論文の引用の多様性の統計を評価するツールを示し、「引用の多様性に関する声明」を含めることを指摘している。学術誌のレベルでは、女性が著者の論文をより多く掲載することが、よりジェンダーバランスが取れた引用文献リストにつながる可能性がある。

doi: 10.1038/s41567-022-01770-1

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