注目の論文

天文学:従来の発生源モデルに疑問を投げかける「変わり種」のガンマ線バースト

Nature Astronomy

2022年12月8日

Astronomy: ‘Oddball’ gamma ray burst challenges models of origins

NatureとNature Astronomyに今週掲載される合計5報の論文には「変わり種」のガンマ線バーストが記述されている。これは、継続時間の長いガンマ線バーストの一種だが、発生源の点で継続時間の短いガンマ線バーストに近いと考えられている。この知見は、ガンマ線バーストの継続時間の長短が推定発生源の種類によって直接決まるという長年の仮説に反した内容になっている。

ガンマ線バースト(GRB)は、遠く離れた銀河での爆発によって発生するガンマ線光のパルスだ。ガンマ線バーストは、大質量星の崩壊によって生じる超新星に関連した長いガンマ線バースト(継続時間が10秒以上)と2つの中性子星の合体によって発生すると考えられる短いガンマ線バースト(継続時間が2秒未満)の2つのグループに分類されている。ところが、この分類に継続時間と想定発生源が適合しない「変わり種」ガンマ線バーストが観測されたのだ。

Natureに掲載される4報の論文と、Nature Astronomyに掲載される1報の論文では、短いガンマ線バーストと同じ性質を有するが、継続時間の長いガンマ線バーストGRB 211211Aが2021年12月11日に観測されたことが報告されており、このガンマ線バーストが2つのコンパクト天体(中性子星など)の合体によって発生したことが示唆されている。この明るいバーストは、11億光年離れた銀河から発したもので、約1分間継続した。Eleonora Trojaたちの論文では、キロノバ(2つのコンパクト天体が衝突した後に起こる爆発)が原因だったと示唆されている。また、Jillian Rastinejadたちの論文でも同じ結論に達しており、GRB 211211Aについて観測された複雑な光度曲線が、通常は超新星に関連した長いガンマ線バーストでは見られないものであり、天体の合体現象を示している可能性が示唆された。Bin-Bin Zhangたちの論文では、このバースト自体の継続期間が長すぎて、短いガンマ線バーストとして分類できない点が指摘され、ガンマ線放射とキロノバ放射の両方を説明するために、このバーストの新たな前駆天体が提案されている。そして、Alessio Meiたちの論文では、このガンマ線バーストの約16分後に発生し、5時間以上継続した高エネルギーガンマ線放射が報告されており、Meiたちは、これがキロノバによって放出された光子によって発生したと考えている。また、Benjamin Gompertzたちの論文では、ガンマ線バーストGRB 211211Aからの高エネルギー放射が、天体の合体を発生源とするシナリオと一致することを明らかにした。Gompertzたちは、フェルミガンマ線宇宙望遠鏡とニール・ゲーレルス・スウィフト天文台の複数の機器を用いて5分間にわたってGRB 211211Aを観測し、光速に近い速度で移動する電子によって高エネルギー放射が発生することを発見した。これを説明する1つの仮説によると、これらの相対論的電子が、天体の合体過程で生成される「プロトマグネター」によって加速されてアウトフローになった可能性があるとされる。

以上の知見が合わさることで、変わり種のガンマ線バーストの発生源と性質に関する我々の理解が深まるかもしれない。

doi: 10.1038/s41586-022-05327-3

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