注目の論文
プロトン1個のスイッチ
Nature Nanotechnology
2011年12月12日
A single proton switch
最も小さい原子スイッチユニットを持つ分子デバイスが、Nature Nanotechnology(電子版)に報告されている。このスイッチは、プロトン1個の移動を利用しており、分子エレクトロニクス機器の開発に役立つことになるかもしれない。 分子エレクトロニクスでは、電子回路部品として分子が使われるが、スイッチの作製が重要な要件となっている。このたび、W Auwarterらは、銀表面に固定されたポルフィリン分子を用いて分子スイッチを作製している。ポルフィリンは、中央に孔のあいた平面有機分子であり、孔の部分に2個の水素原子を取り込むことができる。これらの水素原子は、走査トンネル顕微鏡(STM)のチップから出る電子を用いて、2つの状態を切り替えることができる。さらに、STMチップで2個のうち1個の水素原子を取り除くことによって、4段階のコンダクタンススイッチを形成できる。つまり、ポルフィリン分子の孔の中で、残ったプロトンが4つの位置の間を移動できるのだ。 Auwarterらは、ポルフィリン分子全体のサイズはスイッチング動作の影響を受けないので、スイッチの性能を損なうことなく、別の分子や部品とつなぎ合わせることができると報告している。したがって、もっと複雑な電子デバイスの開発が可能になるであろう。
doi: 10.1038/nnano.2011.211
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