注目の論文

天文学:恒星間天体「オウムアムア」が加速した原因を解明する

Nature

2023年3月23日

Astronomy: Explaining the acceleration of the interstellar object ‘Oumuamua

恒星間天体「オウムアムア」は、原因不明の加速をしたことが知られているが、この点について、オウムアムアを構成する氷から水素ガスが放出されたことが原因であると示唆した論文が、今週、Natureに掲載される。

オウムアムアは、初めて見つかった恒星間天体で、太陽系の外で誕生し、太陽系を通過するところがモニタリングされている。このオウムアムアについては、小規模な非重力的加速が観測されている。通常、こうした加速は、物質中にトラップされたガスの放出が関係しており、彗星で観測されている。しかし、オウムアムアには、これ以外に典型的な彗星活動の痕跡(例えば、塵やガスの尾)が見られない。こうした一見矛盾した観測結果のために、研究者がオウムアムアの性質を正確に解明することが困難になっている。

今回、Jennifer BergnerとDarryl Seligmanが構築したモデルによれば、オウムアムアが低温の星間空間で宇宙線照射などを受けた結果、オウムアムアを構成するH2Oを多く含む氷に分子状水素(H2)がトラップされ、オウムアムアが太陽に近づくとエネルギーを受けて氷の状態が変化し、トラップされたH2が氷から放出され、その後、オウムアムアから水素ガスが噴き出したことが加速の原因とされる。その結果、オウムアムアが太陽系を通過する軌道がわずかに曲がった。これらの反応は、既存の実験研究で実証されており、このような実験条件下で、分子状水素が氷中にトラップされ、その後放出されることが明らかになっている。

また、このモデルが、それ以上の修正をせずにオウムアムアの特異な性質を理解するために役立つことも重要な点として指摘されている。今回の研究で得られた知見は、「オウムアムアが、太陽系の彗星と同様に、氷微惑星(惑星形成の初期段階に生成される微小天体)として誕生した可能性がある」とする従来の学説を裏付けている。

doi: 10.1038/s41586-022-05687-w

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