環境:天然ゴムの生産による森林破壊の影響はこれまで考えられていたよりも大きい
Nature
2023年10月19日
Environment: Rubber production rubs out more forest than previously thought
東南アジアにおける天然ゴム生産関連の森林減少は、これまでの推定値の少なくとも2~3倍に達している可能性があることを示した論文が、Natureに掲載される。人工衛星の観測データから、1993年以降、天然ゴム生産に関連した膨大な森林減少が起こったことや、主要生物多様性地域に天然ゴム農園が開設されたことなどが判明した。今回の知見は、東南アジアにおいて天然ゴムの生産が生物多様性と生態系サービスに与える影響が広範囲に及んでいる可能性を示している。
熱帯の森林破壊の最大99%に、国際商品(牛肉、ダイズ、アブラヤシ、天然ゴム、コーヒー、ココアなど)の生産が関係している。換金作物の生産拡大が自然林に及ぼす影響を解明することは重要だが、ほとんどの作物について直接観測による研究が行われていない。天然ゴムは、生産による森林破壊の影響について確かなことがほとんど分かっていない主要商品の一例であり、いろいろなモデルによる影響評価の結果に5倍以上の開きがある。
今回、Antje Ahrendsらは、地球観測衛星データとクラウド・コンピューティングを用いて、東南アジア全域を対象とした天然ゴム農園とそれに関連した森林破壊の高解像度マップを作製した。このマップは、天然ゴム生産に関連した森林減少が、政策レベル、一般市民の認識、最近の報告書で過小評価されてきたことを示している。今回の研究では、リモートセンシングによる観測という直接的な方法を用いて、天然ゴム生産による森林破壊が、現在の政策決定に広く用いられている数値よりも少なくとも2~3倍高いことを明らかにした。Ahrendsらは、1993年以降の天然ゴム生産による森林減少が400万ヘクタールを超え(2000年以降の森林減少は200万ヘクタール以上)、100万ヘクタール以上の天然ゴム農園が主要生物多様性地域に開設されたことを示している。
Ahrendsらは、国内政策、貿易協定、立法措置の局面で、天然ゴム生産の影響にもっと注目すべきだと述べている。
doi: 10.1038/s41586-023-06642-z
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