人工知能：AIを活用したサッカー戦術の向上

サッカーの試合でのコーナーキックの結果を予測し、現実的で正確な戦術提案を行う人工知能（AI）システム「TacticAI」について報告する論文が、Nature Communicationsに掲載される。今回の研究で行われたユーザー調査では、英国のリバプールFC所属の複数の専門家が、提示されたプレー状況の90％で、既存の戦術よりもTacticAIが提案する戦略を支持した。この研究は、コーチが各試合で最適な選手配置を行い、勝利の可能性を最大化するために対抗戦術を立てるのを支援する次世代のAIアシスタントの基礎を築くものとなる可能性がある。

サッカーの試合で、コーナーキックは重要だ。コーナーキックは、その直後に1点が入る機会であり、コーチが介入して状況を改善できる最も直接的な機会でもある。実際には、コーナーキックの一連の動きは試合開始前に決まっているため、1点を得る可能性を分析し、それを高めるために役立つシステムがあれば、人間の専門家を支援する上で役立つと考えられる。

今回、Zhe Wang、Petar Veličković、Karl Tuysらは、プレー中の選手に関する高品質の追跡データを用いてコーナーキックを分析するAIアシスタントコーチ「TacticAI」を設計した。この設計では、幾何学的ディープラーニングが使用され、結果の予測と戦術の生成を行うために非常に重要な数々の戦略パターンが特定された。これにより、TacticAIは、コーナーキック後に最初にボールを受ける選手とコーナーキックの直接的な結果を正確に予測しただけでなく、別の選手配置にした場合の結果を評価し、試合の結果を向上させる数々の戦術を生成することもできた。著者らは、リバプールFCから提供された過去のプレミアリーグの試合での7176例のコーナーキックのデータセットを使ってTacticAIの訓練と検証を行った。その結果、TacticAIの利点が実証され、このシステムが生成した戦術的な選手配置は現実世界のシナリオと区別がつかない現実的なものであることが、サッカーの専門家5人の評価によって示された。これらの専門家の内訳は、リバプールFCのデータサイエンティスト3人、ビデオアナリスト1人、コーチングアシスタント1人だった。また、ユーザー調査においても、TacticAIが示した戦略は既存の戦術に比べて、提示されたプレー状況の90％で支持された。

著者らは、この方法を他のセットプレー（スローインなど）やプレーが停止する状況が生じる他の団体競技にも一般化できる可能性があるという考えを示している。
 

doi: 10.1038/s41467-024-45965-x

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