注目の論文
カオスからの着想
Nature Photonics
2008年11月23日
Inspiration from chaos
乱数生成器は、Eメールやインターネット取引の暗号化など日常生活のさまざまな場面に役立つ。レーザーを利用すれば、高速乱数生成器の作製が可能になるかもしれない。今回Nature Photonics(電子版)に掲載される研究によると、ノイズやカオスはレーザーの難点として認識されているが、実際は、現代の幅広い用途に有益な効果をもたらす可能性がある。
信頼できる乱数は、予測不可能かつ再生不可能であり統計的な偏りがないため、機密性を確保できる。しかし、過去に報告された方法は、迅速に生成できるが予測されやすい擬似乱数を生成するか、真のランダム性をもたらすが生成速度が遅くメガビット毎秒のオーダーに限られているかのどちらかであった。
内田淳史らは、2つのカオス的半導体レーザーの揺らぐ光出力をサンプリングすることによって、真にランダムなビットシーケンスを、ランダム性が検証された過去の方式より1桁速い最高1.7ギガビット毎秒の速度で生成できることを報告している。重要なのは、レーザーのノイズがもたらす予測不可能性、およびレーザーのカオス的ダイナミクスによってもたらされるレーザーノイズの非線形増幅・混合過程を利用することである、と研究チームは示唆している。
真にランダムなビットシーケンスの高速生成という今回の成果は、市民情報保護におけるセキュリティー向上や、将来の量子暗号システムにおける安全鍵生成の高速化をもたらすと期待される。また、核医学や計算化学にかかわる複雑状況のコンピューター計算への応用が考えられる。
doi: 10.1038/nphoton.2008.227
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