Research Press Release
【栄養】乳幼児期栄養不良の解明を進める
Nature Communications
2015年8月5日
乳幼児期栄養不良の主たる要因として広く知られる環境性腸症(EE)の原因と考えられるものについての報告が、今週掲載される。今回の研究では、EEの動物モデルが初めて作製され、食餌と微生物の組み合わせによってマウスの小腸に変化が生じ、ヒトのEEの特徴を持つようになることを示す証拠が見つかった。
栄養不良は世界的に重要な健康問題で、5歳未満の乳幼児の死亡例の原因の20%を占めている。EEは、小腸の慢性炎症性疾患であるが、解明が遅れており、それが栄養不良の乳幼児に対する治療介入の成功率が低い(3分の1未満)理由だと一部の研究者は考えている。また、EEの動物モデルが存在していないため、この疾患の原因と進行の解明と治療薬候補の検証は困難だった。
今回、Brett Finlayたちは、若齢仔マウスが栄養価のやや低い食餌を摂取し、糞便細菌の経口暴露(劣悪な衛生状態の再現)を繰り返すとEEの症状が誘発されることを明らかにし、EEのマウスモデルを作製した。この新知見は、栄養価の低い食餌によって小腸の生態系が変わり、周囲から獲得された微生物が定着したことを示している。マウスにおけるEEの機構を突き止め、その機構がEEに苦しむヒトの子どもにも適用できるかどうかを明らかにするためにさらなる研究が必要となっている。
doi:10.1038/ncomms8806
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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