【神経科学】超音波によるニューロンの刺激
Nature Communications
2015年9月16日
遺伝子組換えと微小な気泡を利用した新しい方法によって、超音波による線虫のニューロンの個別的刺激が可能となることが明らかになった。光を利用する既存の方法(例えば、光遺伝学的手法)よりも侵襲性の低いやり方で深部組織のニューロンを刺激できるようになることを論文著者は期待している。この研究成果についての報告が、今週掲載される。
ニューロンを活性化、あるいは不活化させるために現在用いられている光遺伝学的手法のような方法は、侵襲性の高い外科的処置を必要とするため、深部脳領域で利用することが難しくなっている。これに対して、超音波は、深部組織まで達し、骨を透過するため、ニューロン集団の刺激に適していることが、切除されたニューロンと生きている動物を用いた研究で明らかになっている。ところが、超音波の収束領域が1個のニューロンよりも大きいため、ニューロンを個別に刺激することは難題となっていた。
今回掲載されるSreekanth Chalasaniたちの論文には、超音波を増幅するガス入り微小気泡と遺伝子組換えを併用して、ニューロンを個別に操作する非侵襲的な方法(‘sonogenetics’と命名)について記述されている。Chalasaniたちは、線虫の一種Caenorhabditis elegansを用い、この方法を調べた。その結果、野生種のC. elegansはそのままでは低圧超音波に対する感受性がないが、遺伝子組換えによってニューロンの感受性が高まり、C. elegansの運動行動が変化することが分かった。Chalasaniたちは、この方法を他の動物の細胞機能の操作にも利用できるという考えを示している。
doi:10.1038/ncomms9264
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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