磁気コンパスのようにふるまうタンパク質複合体
Nature Materials
2015年11月17日
磁場の方向を向くタンパク質複合体が特定されたこと、ならびにこの複合体の遺伝子が多くの動物種に存在していることが、今週のオンライン版で発表された。このタンパク質複合体は、動物の磁場感知能力の原因となっている可能性がある。また、この複合体の特性を利用すれば、磁場を用いて生物学的過程を調節するなど、さまざまな応用が可能になるかもしれない。
多くの動物種は、地球の磁場の方向、強度、伏角を感知することができ、そうした情報をナビゲーションの手掛かりとして用いている。磁場感知能力を説明する生化学モデルは存在するものの、磁場感知を可能にする生物学的機構については不明な点が多い。
Can Xieたちは、ショウジョウバエのゲノムを合理的な生物学的仮定に基づいてスクリーニングすることによって、光感受性クリプトクロムタンパク質(Cry)ユニットと結びついて自発的に外部磁場の方向を向くポリマー状のタンパク質(MagRと名付けられた)を特定した。さらに、生化学的手法や生物物理学的手法を駆使して、MagR/Cry複合体がハトの網膜内で安定であること、またこの複合体がチョウ、ラット、クジラ、ヒトの細胞内でも形成されうることを示した。
MagR/Cry複合体が磁場を感知する機構はまだ分かっておらず、MagR/Cryが動物の磁場感知に関与しているかどうかも不明である、とXieたちは指摘している。しかし、そうした磁気コンパスのようなタンパク質複合体が発見されたことで、磁場を使って巨大分子や細胞挙動を操作する新しい方法が数多くもたらされる可能性がある。
doi:10.1038/nmat4484
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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