【健康】マウスの脳内に沈着したアミロイドベータ斑の除去に役立つ可能性のある分子
Nature Communications
2015年12月9日
ある低分子を添加した飲み水をアルツハイマー病の症状を示すマウスに与えると、このマウスの脳内に沈着したアミロイドベータが分解されることを報告する論文が掲載される。この新知見を臨床応用できるかどうかを明確にし、この新しい治療法の安全性と有効性を評価するには、さらなる研究が必要とされる。
アルツハイマー病の初期の徴候の1つは、患者の脳内に粘着性タンパク質であるアミロイドベータの断片が沈着することだ。アミロイドベータは、凝集して「プラーク」を形成し、脳細胞の損傷に関与している可能性がある。アルツハイマー病の新しい治療法の多くは、こうしたプラークの形成の阻止を試みているが、すでに形成したプラークの除去は難しい。
今回、YoungSoo Kimたちは、8~11匹のマウスからなるグループを対象とした一連の実験を行い、アルツハイマー病の症状を示すマウスの飲み水にEPPSという低分子を添加すると、その脳内に沈着したプラークが分解されることを明らかにした。また、この治療法を適用した場合に、マウスの学習上の問題と記憶上の問題に改善が見られることも明らかになった。
EPPSについては、これまでにも研究報告があるが、生きた動物の認知症様の症状を治療できることが明らかになったのは今回が初めてだ。EPPSがアミロイドプラークを除去する機構については分かっていないが、この新知見は、アルツハイマー病のさまざまな段階における新たな臨床的治療法の開発に役立つ可能性がある。
doi:10.1038/ncomms9997
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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