ジカウイルスの主要タンパク質の結晶構造
Nature Structural & Molecular Biology
2016年4月19日
ジカウイルス(ZIKV)の非構造タンパク質1(NS1)の分子構造について報告する論文が、今週のオンライン版に掲載される。今回の研究で、ジカウイルスに近縁なウイルス(デングウイルスやウエストナイルウイルスなど)の病原性発現に関係するタンパク質が原子レベルで明らかになった。
蚊が媒介するZIKVは、現在、南北アメリカで感染症の流行を起こしている。ZIKV感染の症状は軽いのが通常だが、ZIKVは、(新生児の頭囲が異常に小さいことを特徴とする)小頭症とまれな自己免疫疾患であるギラン・バレー症候群と関係づけられており、そのために世界保健機関(WHO)が公衆衛生上の緊急事態を宣言した。ZIKVは、フラビウイルスの一種で、デングウイルスとウエストナイルウイルスに近縁なウイルスだ。デングウイルスのNS1は、ウイルスの病原性発現にとって重要で、ウイルス感染の診断に用いられ、抗ウイルス薬の開発における標的として提案されている。
今回、George Gao、Yi Shiたちの研究グループは、X線結晶構造解析を行って、2015年にブラジルで単離されたZIKV株の塩基配列に基づいて、NS1断片の構造を解明した。その結果、ZIKVのNS1がデングウイルスやウエストナイルウイルスのNS1とほぼ同じだが、ZIKVのNS1の表面上の電荷(プラスかマイナスか)の分布が大きく異なっており、この特徴は、宿主因子との相互作用の差異に関連している可能性のあることが判明した。Gaoたちは、このようにZIKVのNS1の表面の静電特性が独特なことがZIKV感染の新たな診断ツールの開発に役立つ可能性があると結論づけている。
この論文は、利用可能な最良の研究の証拠とデータが公衆衛生上の緊急事態に対する世界規模の対応に確実に反映されるようにするための出版社・研究助成機関の合意に基づき、追って通知があるまで無償でアクセスできるようになっている。
doi:10.1038/nsmb.3213
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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