【健康】マウスの急性骨髄性白血病に対するマイクロRNA治療
Nature Communications
2016年4月27日
急性骨髄性白血病(AML)のマウスモデルの治療に、miR-22を担持するナノ粒子を利用できる可能性が明らかになったことを報告する論文が、今週掲載される。miR-22とは、遺伝子発現を調節する小型の非コードRNA分子(マイクロRNA)の一種だ。
AMLは、血液細胞のがんの一種で、強力な化学療法が実施されるが、発症から5年以内に死亡する患者が多い。AMLの特徴はゲノム変化であり、その情報は大量に存在しているが、前駆細胞からがん細胞が生じる分子機構についてはほとんど分かっていない。
今回、Jianjun Chenたちは、62人の患者から得た腫瘍サンプルを調べて、AML症例においてmiR-22の発現が低下していることを確認した。また、Chenたちは、AMLのマウスモデルを複数用いて、miR-22の発現が回復すると、特定の細胞内シグナル伝達経路が抑制されて、AML腫瘍の発生と維持が損なわれることを報告している。次に、Chenたちは、2種類の白血病のマウスモデルを用いて、ナノ粒子によるmiR-22オリゴヌクレオチドの送達によってmiR-22の治療可能性を評価した。いずれのモデルにおいてもmiR-22を投与した場合にAMLの進行が遅れ、生存期間が長くなった。
miR-22を担持するナノ粒子を用いてAMLを治療できるようになるには、マウスモデルによる検証をさらに続けてから臨床試験を実施する必要がある。Chenたちは、miR-22による治療法と標準的な化学療法薬を組み合わせれば、AMLに対する有効な治療法になると考えている。
doi:10.1038/ncomms11452
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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