Research Press Release
上昇する冷たい水が南極周辺の海洋温暖化を先延ばしにする
Nature Geoscience
2016年5月31日
南極周辺の海洋で顕著な温暖化が起きていないことは、冷たい水を深部から上へともたらす逆転循環の結果であるとの報告が、今週のオンライン版に掲載される。この発見は、南洋温暖化の時間スケールが数世紀にわたるものであり、それは深海の温度が変化するために必要な時間であることを示している。
千年の時間スケールでは、北極と南洋の両方の極域における温暖化は、全球平均よりも早く起きている。しかしながら、1950年以降は、南極周辺の南洋では温暖化は最小量しか観測されていないが、さらに北の、南極大陸の周りを西から東に向かって流れる南極環流の側面で赤道に最も近い地域では、温度は大きく上昇している。
Kyle Armourたちは、海洋観測と気候モデルシミュレーションを解析し、南洋の温度変化は子午線逆転循環によって支配されていることを示した。特に、Armourたちは南極周辺の風が比較的冷たい水を深部から上へともたらし、同時に暖かい表面の水を赤道へと押しやっていることを発見した。著者たちは、その結果として、温室効果ガス放出に影響された南極周辺の温暖化は、数世紀あるいはそれより長い時間、すなわち海洋深層を暖めるために必要な時間と同じスケールで起きることが予想されると結論づけている。
doi:10.1038/ngeo2731
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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