【画像化】ドガの絵画に隠された肖像画を見つけ出す技術
Scientific Reports
2016年8月4日
フランスの印象派の画家エドガー・ドガの作品「女性の肖像」の下に隠れている肖像画について説明する研究論文が掲載される。これは、隠された肖像画を非侵襲的な技術に用いて調べた研究の成果であり、これによりドガの作品と画法に関する理解が深まる可能性がある。
「女性の肖像」には別の肖像画が隠されていることが知られており、1922年以降、隠された肖像画に描かれた人物の輪郭が徐々に見えるようになってきている。しかし、従来の技術では、輪郭がぼんやりとした女性の絵としか判別できていない。
今回、Daryl Howard、David Thurrowgoodたちの研究グループは、シンクロトロン放射線源を用いて蛍光X線分析(XRF)を実施して「女性の肖像」の元素マップを作成した上で、このマップを処理して、隠された肖像画の疑似カラー表示を行った。Howardたちによれば、隠されていたのはエマ・ドビニーをモデルとする今まで知られていなかった肖像画であるという。また、彼女の耳が全体と不釣り合いで不鮮明であるのは、そのバランスと目鼻立ちが最終的に決まるまで何回かの試行があったことを示しているとHowardたちは指摘している。ドガは「女性の肖像」を描いた頃に妖精ピクシーのような耳を描いていたという研究報告がある。今回の研究では、元素マップの作成によって、当時の標準的な耳の形に描き直される前の妖精ピクシーのような耳を観察できた。
Howardたちは、シンクロトロン放射線源を用いた方法によって芸術作品を調べる技術が進歩すれば、保全目的や学術目的で文化遺産を調べる方法に大きな影響を及ぼすという考えを示している。
doi:10.1038/srep29594
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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