都市圏量子テレポーテーションに向けての第一歩
Nature Photonics
2016年9月20日
合肥(中国)とカルガリー(カナダ)において数キロメートルの光ファイバーネットワーク上で量子テレポーテーション(光子にエンコードされた量子情報をある場所から別の場所へと遠隔転送すること)が実証されたことを報告する2報の論文が、今週のオンライン版で発表される。独立して実施されたこれらの研究は、大都市圏ネットワーク上での量子テレポーテーションが技術的に実現可能であることを示しており、例えば量子インターネットなど、将来の都市規模の量子技術や量子通信ネットワークに向けて道を開くものである。
光ファイバーネットワーク上での量子テレポーテーションによって、インターネット接続のセキュリティーと強度が大いに改善される可能性がある。しかし、光ファイバーネットワークを用いる長距離量子テレポーテーションは、独立した光源を必要とし、これが技術的な課題となっている。つまり、ある光源からの光ビームは、変化する環境を経て敷かれている数キロメートルのファイバーを通過した後も、別の光源からの光ビームと区別できないようにする必要がある。
2つの研究グループが、この点を克服するために、独立してフィードバック機構と同期機構を開発し、テレポーテーション実験を可能にした。Qiang ZhangとJian-Wei Panたちは、合肥(中国)で現地試験を実施し、ファイバー内の信号光の減衰速度を最小限にするため現行の通信ネットワークに用いられている通信波長の光を用いた。Wolfgang Tittelたちはカルガリー(カナダ)で試験を行い、通信波長の光子と波長795 nmの光子を用いた。このため、Tittelたちの量子テレポーテーション実験の方が、ZhangとPanたちの実験よりも転送速度が速かった。しかし、忠実度はTittelたちの方が低かった。
同時掲載のNews & Views記事で、Frederic Grosshansは次のように述べている。「今回の2つの実験は、都市レベルの距離のテレポーテーションが技術的に実現可能であることを明確に示している。今回の研究をもとに、間違いなく多くの興味深い量子情報実験が構築されるであろう」。
doi:10.1038/nphoton.2016.179
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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