【気候科学】大気中二酸化炭素濃度の上昇傾向の加速に歯止め?
Nature Communications
2016年11月9日
人間活動による二酸化炭素(CO2)排出量が増加しているにもかかわらず、最近になって大気中CO2濃度の上昇率の増加傾向が止まっているという見解を示した論文が、今週掲載される。この新知見は、陸上の植生による炭素吸収量が増加して、大気中に残留する人間活動によるCO2排出量の割合が小さくなったことを示唆している。
大気中CO2濃度の絶対値は、産業革命以降、上昇を続けているが、その上昇率には有意な年々変動が認められ、主な原因として植物の成長が年によってばらつくことが挙げられる。CO2は気候変動を促進する役割を果たすため、大気中CO2濃度の上昇率の変化を定量化することは非常に重要だ。ところが、植物の成長は、さまざまな過程(特にCO2の吸収量と放出量の収支)によって制御されるため、大気中CO2濃度上昇率の変化を評価するのは難しい。
今回、Trevor Keenanの研究グループは、各種観測データと植生モデルを用いて、こうしたさまざまな駆動要因の収支を求めた。そしてKeenanたちは、大気中CO2濃度の上昇によって光合成(CO2吸収過程の1つ)が増えたが、全球気温の上昇傾向が鈍化したために呼吸(CO2放出過程の1つ)が減ったことを明らかにした。この2つの要因は、植物によるCO2吸収量が増え、人為的に排出され大気中に残留するCO2の占める割合が2002年から2014年の間に年約2.2%のペースで減ったことを意味している。
Keenanたちは、大気中CO2濃度の上昇率の増加傾向が止まっているのは一時的なことである可能性があり、CO2濃度の絶対値の増加が続いていることを踏まえると、植物による炭素貯蔵を増やすことで気候変動の問題は解決しない、と警告している。
doi:10.1038/ncomms13428
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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