Research Press Release
【微生物学】マラリア抵抗性から着想した新しいマラリア治療法
Nature Communications
2016年11月9日
重症のマラリアに対して抵抗性を有する人々に見られる赤血球の「防御」状態を模倣するマラリア治療法が、マウスを用いた小規模な研究で実証された。この暫定的な研究結果は、マラリア原虫ではなく、宿主の細胞を標的とし、治療抵抗性の発生を減らせる可能性のある新しい抗マラリア薬の開発にヒントを与える可能性がある。この研究の詳細を報告する論文が、今週掲載される。
ヒト集団の一部は、重症のマラリアから身体を守る遺伝的変異を有し、こうした遺伝的変異は、赤血球と赤血球内に寄生するマラリア原虫との相互作用に影響を及ぼす。今回、Michael Lanzerの研究チームは、酸素を運搬するヘモグロビン分子における変異が、赤血球の酸化剤の不均衡を引き起こし、このいわゆる酸化還元不均衡が、マラリア原虫と赤血球の相互作用に影響を及ぼすことを明らかにした。こうした酸化還元不均衡を人工的に引き起こす分子にも同じ効果がある。Lanzerたちは、ヘモグロビンと反応するメナジオンという酸化促進性栄養補助食品を使って6匹のマウスを処理し、脳マラリアの症状が軽減されることを明らかにした。
このようにマウスを用いた実験からは希望の持てる結果が得られたが、酸化促進性の薬物には有害な作用がある可能性をLanzerたちが指摘しているため、今後は、この方法の安全性と有効性に取り組むための研究を行う必要がある。
doi:10.1038/ncomms13401
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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