【気候科学】鳥の糞が北極圏の寒冷化を促進している
Nature Communications
2016年11月16日
鳥の糞の堆積物(グアノ)は雲の形成を促進することで北極の寒冷化に小さな寄与をしていることを報告する論文が、今週掲載される。この新知見からは、渡り性の海鳥のグアノが放出するアンモニアと雲との関連性が北極の気候に影響を及ぼす役割を担っているという過去の研究では得られなかった結論が示唆されている。
近年、北極では相当な温暖化が起こっているが、地表温度が変化する際には雲が重要な役割を果たしているため、雲の形成に影響を及ぼす要因を解明することが必須となっている。雲の形成にとって極めて重要なのが、利用可能な雲凝結核(表面に水が凝結する小さな粒子)の量だが、雲凝結核は、さまざまに相互作用する物理学的、生物学的反応の影響を受けている。
今回、Betty Croftの研究チームは、渡り性の海鳥のコロニーが雲の形成にどの程度影響を及ぼすのかを観測結果とコンピューターによるモデル化によって調べた。その結果、Croftたちは、夏季にグアノからのアンモニア放出に関連した大気粒子の爆発的増加があることを報告している。こうした大気粒子は、この海鳥コロニーの周辺に集中しているが、北極全体に広がって、雲粒の形成を促進する。その結果、入射する太陽光における宇宙空間に反射される光の割合が大きくなり、北極の寒冷化を示す小さなシグナルとなっているのだ。
Croftたちは、この雲による寒冷化効果が比較的小規模で、人為起源の気候変動の影響を相殺できるほど強いものではない点に注意を要すると述べている。
doi:10.1038/ncomms13444
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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