Research Press Release
2009年の新型インフルエンザ(H1N1)大流行の基本機構
Nature Medicine
2010年12月6日
2009年の新型インフルエンザウイルス(H1N1)は高齢者や小児よりも青年から中高年者に重い症状を引き起こしたが、その原因となる機構の報告が寄せられている。
2009年の新型インフルエンザの大流行では、重い症例の年齢構成が独特だった。普通はインフルエンザウイルスは、高齢者や小児のように免疫系の弱い人のほうが感染しやすい。F Polackたちは、17歳から57歳の成人にみられた重い症例の原因は、季節性インフルエンザウイルスに対する既存の抗体がH1N1ウイルスに交差反応したためであることを発見した。この既存の抗体はH1N1ウイルスに対する防御効果はないが、免疫複合体が介在する病気に関係があり、抗体とウイルスタンパク質の凝集物が腎臓や肺などの臓器に蓄積して、インフルエンザ感染後の合併症に結びつく。
Polackたちは、H1N1ウイルス感染によって死亡した17〜57歳の患者の肺試料を1957年のH2N2インフルエンザの死亡例と比較し、免疫複合体病の発症機構が両者でよく似ていることを明らかにした。
doi:10.1038/nm.2262
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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