Research Press Release
【神経科学】脅威にさらされたマウスがすくむか逃げ出すかが決まる過程
Nature
2016年6月2日
マウスの防御行動(例えば、すくみや逃走)の基盤となる脳回路について報告する論文が、今週掲載される。今回の研究では、高次脳機能に極めて重要な高度に組織化された神経回路が、危険に直面した時に生き残りを促進する進化的に古いシステムにも関与している可能性が示唆されている。
脅威に対する応答である恐怖は、進化的に保存された状態であり、さまざまな形態の防御的行動の引き金となっている。恐怖に関係する脳の重要な部分としては、中脳水道周囲灰白質域(PAG)が同定されている。しかし、防御的行動を促進する作用のあるPAGへの経路やPAGからの経路については解明が進んでいない。
今回、Andreas Luthiたちは、雄のマウスの扁桃体からPAGに至る経路で、前運動ニューロンに投射してすくみを引き起こすものを同定した。今回の研究では、マウスにリモコン操作のヘビのおもちゃを見せる実験が行われ、すくみには腹外側PAGのニューロンの活性化が必要なことが明らかになった。また、この「すくみ」経路が、逃走に関係する回路と相互作用することも分かった。以上の新知見を総合することで、適切な防御行動の迅速な選択に関与する神経回路が明らかになった。これによってマウスは、脅威の度合いの変化や状況によって変化する諸課題に適応できるようになっているのだ。
この新知識は、ヒトの不安障害に関係しているとされている不適切な恐怖応答に関する我々の理解を深めるものとなる可能性がある。
doi:10.1038/nature17996
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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